契約書や領収書に印紙を貼付するのかしないのか、悩まれた経験のある方もいらっしゃると思います。そこで医療機関や福祉施設における印紙の貼付について、基本を確認します。
ここでいう「印紙」とは、法で定められた20種類の課税文書に対して課された印紙税を納める際に利用する収入印紙の略語を指します。
印紙税は、その課税文書を作成した納税義務者が、原則、印紙税相当額の収入印紙を文書に貼り付けて、印章や署名などにより印紙を消印して納めます。
つまり印紙税を納めるために、課税文書に印紙を貼る必要があります。
20種類の課税文書とは、以下にあるような印紙税法別表第一の課税物件表に掲げられている20種類の文書により証されるべき事項を証明する目的で作成されたもののうち、非課税文書に該当しない文書をいいます。
非課税文書とは、課税物件表に掲げられている文書のうち、次のいずれかに該当する文書をいいます。
原則として、お金を受領した際に作成して交付する領収書は、第17号文書に該当します。営業に関しない領収書や受取金額が5万円未満の領収書を除き、課税文書として印紙税が課されます。
この「営業に関しない領収書」とは、商法上の「商人」に当たらないと解されている者が作成する文書のことをいいます。
例えば医療機関や福祉施設であれば、自由職業者である医師、公益目的あるいは利益や剰余金の配当や分配のない医療法人・社会福祉法人・公益法人・公益社団法人・公益財団法人・一般社団法人・一般財団法人・NPO法人などであれば、この“商法上の「商人」に当たらないと解されている者”に該当します。したがって、領収した金額が5万円を超えたとしても領収書に印紙を貼る必要はありません。
診療や福祉サービス等の提供に際して料金を受領しても印紙を貼る必要がないのは、この理由からです。
他方、上記「商人」に当たらないと解されていたとしても、土地の売買契約書や給食業務委託契約書、消費貸借契約書などについては、原則として課税文書となり、印紙税が課されます。
これらの文書は、「商人」に当たるか否かが課否判断の要件とされていないためです。
ただし、実際に課税文書となるか否かは、契約書名で判断するのではなく、その契約の内容を読んで20種類の課税文書のいずれに該当するか否かを判断します。記載されている内容を十分に確認する必要が生じます。
なお、印紙税は「文書」が対象となるため、例えば書面ではなく電磁的記録に変換した媒体を電子メールで送信して完結する場合には、印紙税は課されません。例えば電子契約による契約書をPDFファイルにて送信した場合には、そのPDFファイルは「文書」に該当しないため印紙税は課されません。
不要な文書に印紙を貼らないよう、印紙の貼付に関するご相談は、お気軽に当事務所までお問い合わせください。
参考:国税庁HP「印紙税質疑応答事例「営業に関しない受取書(作成者)」」など